精巣腫瘍とは

精巣腫瘍は、精巣(睾丸)にできる悪性腫瘍(がん)で、20〜40代の比較的若い男性に多く発生するのが特徴です。
進行が速いタイプもありますが、治療に対する反応が良好なことが多く、適切な治療で高い治癒率が期待できます。

精巣腫瘍は「胚細胞腫瘍」と呼ばれる種類が全体の90%以上を占め、以下の2タイプに分類されます。

●セミノーマ(精上皮腫)
比較的進行がゆっくり
放射線・化学療法が効きやすい

●非セミノーマ
絨毛がん、胎児性がん、奇形腫、卵黄嚢腫などを含む
セミノーマより進行が早いが、化学療法に反応しやすい

主な原因

停留精巣(陰嚢に降りてこなかった精巣)
家族歴(精巣がんの既往)
出生時の低体重・不妊症との関連
欧米系の人種に多い(日本ではまれだが増加傾向)
※ 多くの場合、明確な原因は不明です。

症状

片側の精巣のしこりや腫れ(痛みがないことが多い)
陰嚢の違和感・重い感じ
乳房の腫れや痛み(ホルモン産生腫瘍の場合)
転移がある場合:腰痛、呼吸苦、頸部リンパ節の腫れなど
※ 痛みがないのに睾丸が腫れている場合は注意が必要です。

治療方法

高位精巣摘除術(根治的手術)
腹部(鼠径部)から腫瘍を含む精巣を切除する
まずはこの手術で診断と治療を兼ねる

追加治療(腫瘍の種類・進行度に応じて)

■ セミノーマの場合:放射線療法(局所転移まで)
抗がん剤治療(転移がある場合)

■ 非セミノーマの場合:抗がん剤治療(BEP療法などが一般的)
転移が残っている場合は追加手術(後腹膜リンパ節郭清など)

予後と経過観察

早期発見なら治癒率は90%以上と非常に高い
手術後も5年以上の長期フォローが必要(再発リスクあり)
定期的なCT・腫瘍マーカー検査で再発の早期発見を行う

日常生活での注意点
陰嚢の自己チェックを習慣に(入浴時などに)
片方の精巣を摘出しても、もう一方が正常なら性機能・生殖機能は維持可能
精子凍結保存など、将来の妊よう性への備えも検討可能

精巣腫瘍は若年男性の数少ないがんですが、早期発見・適切な治療で高い治癒が望めます。
陰嚢の異変に気づいたら、早めに泌尿器科を受診することが大切です。