神経因性膀胱とは

神経因性膀胱とは、脳や脊髄、末梢神経などの障害によって膀胱や尿道の働きが正常に保てなくなる状態のことです。
排尿をコントロールする神経がうまく機能しなくなることで、尿が出にくい・漏れる・残るなどの排尿障害が起こります。

主な原因

▼ 中枢神経の障害(脳・脊髄)
脳卒中(脳梗塞・脳出血)
パーキンソン病
多発性硬化症
脊髄損傷(事故・外傷)
脊髄腫瘍・脊柱管狭窄症

▼ 末梢神経の障害
糖尿病による神経障害(糖尿病性神経因性膀胱)
多発性神経炎
骨盤内の手術や放射線治療による神経損傷

症状

神経の損傷部位や程度により、症状は大きく異なります。

▼ 尿がうまく出せないタイプ(低活動型・弛緩型)
排尿困難(尿が出にくい)
残尿感
尿閉(まったく出なくなる)
頻尿・尿路感染(残尿が原因)

▼ 尿が勝手に出るタイプ(過活動型・反射型)
頻尿・尿意切迫感
尿失禁(漏れる)
夜間頻尿
意識とは無関係に排尿してしまう
※両方の症状が混在するケースもあります(混合型)

治療方法

神経因性膀胱は根本的な神経回復が難しいことが多いため、症状をコントロールし合併症(感染や腎機能障害)を防ぐことが主な治療目標となります。

▼ 保存的治療(軽度の場合)
排尿習慣の改善(定時排尿)
骨盤底筋体操(失禁対策)
水分摂取の工夫

▼ 薬物療法
抗コリン薬、β3刺激薬:過活動膀胱を抑える(頻尿・尿意切迫)
α遮断薬:排尿をスムーズにする
抗生物質:感染時の治療

▼ カテーテル管理
間欠導尿(自己導尿):一定時間ごとに尿を出す
持続導尿(バルーンカテーテル):排尿困難が重い場合に使用

▼ 手術療法(難治例)
尿路変更術、膀胱拡大術など(重症例に限られる)薬物療法(第一選択)
α1遮断薬:前立腺や尿道の筋肉を緩めて尿を出しやすくします。
5α還元酵素阻害薬:前立腺のサイズを縮小させます。
PDE5阻害薬:血管を広げ血流を良くしたり、前立腺、平滑筋を緩めることで尿を出やすくします。
抗コリン薬やβ3作動薬:頻尿など膀胱の過活動に対処します。

合併症と注意点

慢性尿路感染症
膀胱結石
腎機能低下(腎盂腎炎や水腎症)
心理的ストレス・社会的制限
→ 定期的な泌尿器科での管理がとても重要です。